第12回 観察学習
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1. ヒト以外の動物の社会的学習
他個体が特定の場所で強化される状況を観察されることによって、その場所に対する注意が向けられやすくなり、学習が促進されること 経験個体と未経験個体とで一緒に餌を探す場面と未経験個体のみで餌を探す場面の比較
他個体が特定の刺激に関わっているのを観察すると、その刺激と物理的に同じ刺激と関わる確率が高まること ハチの採蜜行動において、他のハチが採蜜行動をしたのと同じ色の花に飛行する確率が高まった 幼鳥が、他の幼鳥が採餌したのと同じ色の餌皿から採餌する確率が高まった 他個体が特定の刺激に対して(レスポンデント)条件反応をしている状況を観察していることにより、観察した個体にも同じ刺激に同じ反応を示すこと この例をもとにして考えると、
局所強調とは、その台所という特定の場所での学習が促進されること
刺激強調とは、ゴキブリと同じ色の刺激への学習の確率が高まること
他個体がオペラント条件づけをしているのを観察することにより、同じオペラント条件づけによって成立すること 動物を被検体とする場合、局所強調や刺激強調が生起している可能性を排除するために、実験状況を統制する必要がある
観察される被検体と観察する被検体とで、
反応対象の物理的特徴が同一で、
反応結果も同一であるが、
複数の異なる反応を自発することができるようにする
ラットがレバーを動かす方向が左右どちらかに動かすことで強化される様子を観察した別のラットが、強化されたのと同じ方向にレバーを動かすことを観察した実験例 2. ヒトの模倣学習
このように評価しておくほうが安全とも言える
ヒト以外の動物でも観察学習を確認することは可能と言えるが
春木(2000)の定義
「モデルの行動を見ることだけで、その行動を学習してしまう」 「これも言葉を持つ人間固有の学習で」
「教示による学習であるが、観察学習は人間のこのような高度な学習形態の原初的なものである」 模倣と観察学習との関連について
「模倣の学習」とはモデルと同じ反応をすることを学習すること 「模倣による学習」とはモデルと同じ反応をすることによって、モデルが習得してる刺激・反応の結合を一気に学習してしまうこと 「模倣の学習」と「模倣による学習」との間には「かなりの飛躍があり(中略)人間は模倣の過程を内在的に言語によってなしている」ために研究が困難 「模倣」という現象は、最近の社会性に関する脳基盤研究の立場から注目されている
しかし、「模倣」についての明確な定義がないために、諸研究を評価し解釈することが困難である
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「観察条件づけ」「強調」は眞邉(2019)の分類と同じ その行為の形式を真似すること
モデルの行動の対象物の運動形式が同じになるようにすること
モデルの行動の目的あるいは結果が同じようになるように行為すること
模倣における「行為の形式」と対象物の運動の再現における対象物の「運動形式」はさらに
形
線形構造
階層構造
因果関係
意図との連関
モデルと対象物や環境との操作的な関係を学習すること
学習内容の区別
対象物や環境自体の性質についての学習
モデルと対象物や環境との関係についての学習
モデルと対象物や環境との操作がどのような機能であるのかについての学習
議論のレベルが異なる基準で考えることが可能な、さまざまな模倣の仕方がある
バビンスキー反射みたいに赤さんを見かけたら試したいやつだmtane0412.icon ミラーニューロンシステムとの関連についての発達研究なども蓄積されている
そもそも「新生児模倣」が模倣であるのかという定義問題もある
3. 観察学習の理論
モデルの複数の行動の模倣を強化した後で、同じモデルの別の行動を観察すると、強化していないのに、その別の行動の模倣が見られること
外的な弁別刺激、モデルの反応、モデルに与えられる強化子全体
「全体」という曖昧な表現
般化模倣における強化子としては、モデルの行動に一致させるという模倣行動そのものに、運動感覚や一致感といった模倣性強化子が存在していることがうかがわれる 「うかがわれる」という曖昧な表現
とは言え、観察学習は強化とは何らかの関係があることは認めざるをえないだろう
モデルを観察する学習者にとって、刺激と反応とを介在する「媒介過程」を想定することで、観察学習を説明しようというもの
行動主義・徹底的行動主義からの説明には限界があるというよりも、まだまだ研究途上であるということの表明であると捉えておくべき
研究対象となっている学習者の過去の行動の履歴を完全に記述することは不可能
観察学習に影響する要因の分析をするのに限界がある
限界やんけmtane0412.icon
研究者が研究目的や研究対象をどのように捉えているか
実践的な研究を目的とする
特定の参加者の問題解決
できるかぎり過去の行動履歴に関わることを把握しようとする
人間一般の特性を明らかにすることを目的としている研究者
個人差は測定誤差
認知主義の立場
「媒介過程」として認知的な過程を想定していると要約することは可能
攻撃映像視聴条件の幼児では、モデル役の大人が行った攻撃行動(暴言含む)やそれに類似する新しい言動をすることが観察された(ボボ人形実験) ボボ人形と呼ばれる、空気で膨らませた大型の人形を用意する ボボ人形を含めさまざまなおもちゃが置かれたプレイルームに幼児をつれていき、そこでの幼児の行動を観察する
幼児は2条件
攻撃映像視聴
攻撃行動がみられた
何も視聴しない
攻撃行動はほとんど観察されなかった
後の「メディアの人間に及ぼす効果」研究にも大きな影響を与えた
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ボボ人形実験でも、全く同一の行動を示しているわけではなく「照合するパターン」として諸行動を示す
注意過程
「モデルとなる事象」の属性に注意をして、観察者にとって重要な情報を識別する
観察者の属性
保持過程
前の注意過程で識別された情報を
観察者属性
産出過程
保持された概念を行動に変換して算出する過程
行動に対し以下によって行動の修正を行う
観察者属性
動機づけ過程
感覚的(sensory)
物質的(tangible)
社会的(social)
制御的(control)
観察された利益やコストによる
物質的(tangible)
自己評価的(self-evaluative)
観察者の属性
実際の行動が取られる
人間には自分の行動を統制する能力があるということ
下位過程の動機づけ過程に自己誘因があげられていたように
自己調整
自己効力感
行動に先行する要因として結果予期と効力予期とを想定
ある行動をすることによってある結果が生み出されることを予期すること そのようなある結果を生み出すために必要な行動をどの程度うまく遂行することができるかについて予期すること
4. 情報化社会における観察学習
「メディアの人間に及ぼす効果」研究
最近のICTを利用した各種のサービスにおける映像の人間への効果
映像には限定されず、メディア全般に当てはまる
言葉によるフィードバック(本章)
情報化社会の環境を操作化するためには、さまざまな条件が複雑に関連しあっており、「メディアの人間に及ぼす効果」研究自体が極めて困難であることを意味している